脳脊髄液漏出症

脳脊髄液漏出症/低髄液圧症について

脳脊髄液漏出症は起立性の頭痛、ふらつき、全身倦怠感を症状とする疾患です。多くの場合、交通外傷やスポーツ外傷をきっかけに生じますが、原因がはっきりとしない場合もあります。外傷後時間が経ってから(30分から数週間)発症します。

脳や脊髄は脳脊髄液に満たされた状態で硬膜に包まれています。硬膜が損傷すると損傷箇所から脳脊髄液が漏れ出します。その結果起立時に脳脊髄液が漏れると、脳や脊髄が下方向に牽引されて頭痛が出現します。

脳脊髄液が漏れ出すことによって頭蓋内の圧が下がった状態を低髄液圧症と言います。低髄液圧症は脳脊髄漏出症と密接に関係しており脳脊髄漏出症の補助診断で有用です。

症状

頭痛、頚部痛が最も多い症状で、これらが体を起こした後に増悪することが特徴です。これらに加え、ふらつき、全身倦怠感、嘔気・嘔吐、食欲低下など症状は多彩です。

診断

画像所見で診断を行います。当院では頭部MRI(単純・造影)、MRミエログラフィーで検査を行っております。

1) 脳脊髄液漏出症
・MRミエログラフィーで漏出箇所を特定します
2) 低髄液圧症
・造影MRIで硬膜が造影されます
・小脳扁桃の下垂、脳幹の扁平化、下垂体前葉の腫大が認められます

診断基準

厚生労働省から「脳脊髄液漏出症画像判定基準・画像診断基準」が発表されております。当院でもこちらに準じて治療を行なっております。

治療

以下の治療を行います

  1. 点滴、安静臥床
  2. ブラッドパッチ(自家血硬膜外注入法:EBP)

点滴と安静臥床で症状が改善しない場合に行います。これは、腰椎部、頚椎部で硬膜のすぐ外側まで針を進め、肘の静脈などから採取した血液を注入します。血液はしばらくして固まり、脳脊髄液が漏出している部位を糊のようにふさぐことを期待した治療です。

入院期間は5〜7日間です。入院中は、脳髄液漏出症問診表に毎日記入していただきます。

ブラッドパッチ療法1回で完治する患者さんもおられますがそうしたケースは1割程度で、平均すると3回の治療を要します。中には全く症状が改善しない場合もあります。

治療・診断の費用

脳脊髄液漏出症の治療で最も大きな問題の一つが費用です。前述の厚生労働省の診断基準で「脳脊髄液漏出症」と診断された場合は保険診療でブラッドパッチを行うことができます。しかし基準に合致しない場合は自費診療となります。当院の経験ではこの診断基準に合致する方は治療を行う方の6分の1程度です。

診断基準において確定所見を得るにはCTミエログラフィー、確実所見を得るにはMRIミエログラフィーもしくは脳槽シンチグラフィーが必要です。他院で検査が行われ、脳脊髄液漏出症の確定所見もしくは確実所見があると診断されている場合は保険診療でブラッドパッチを実施することができますので御相談ください。

ブラッドパッチの合併症

第2回低髄液圧症候群研究会の中での報告によると、以下のような合併症が挙げられています。 EBPを施行した59例中、施行後数時間以内に発生して2日以上続くものとして頭痛、頚肩痛、背部痛、発熱、全身倦怠感などが12例、1日以内に発生し1週間以上続くものとして会陰部痛、下肢痛(坐骨神経痛)9例、数日後(退院後)に動悸、呼吸困難、前胸部痛、不安感などを訴えた症例が3例認められたほか、重篤な二次的合併症として無菌性髄膜炎、敗血症が各1例存在したと報告されています。